お問い合わせ 『輪郭』に込めた想い

高齢者の“買い物難民”が急増中──老後の食事と健康を守るために今できること

Shopping refugees

高齢になると、坂道や重い荷物、バスの減便、近所の店の閉店など、ちいさな変化が重なって買い物が負担になりがちです。すると、生鮮食品が手に入りづらくなり、同じものに偏ったり、食事の質が落ちたりと、知らないうちに健康へ影響が及ぶこともあります。

この記事では、いま増えている「買い物難民(買い物困難)」の背景を踏まえつつ、移動スーパーや宅配、移動支援など“食べることを途切れさせない”ための選択肢と、家族や地域ができる備えをわかりやすくまとめました。

1.身近に広がる“買い物のしづらさ”—食生活が崩れ始める入口

2.日本で広がる「買い物難民」—定義と規模、都市部で増える理由

3.なぜ“買い物のしづらさ”が食事と健康を同時に脅かすのか

4.食が途切れないための選択肢—食品アクセスを支える4つの方法

5.自分に合う方法を見つける:“選び方の基準”と組み合わせ方

6.今日からできる:食事が途切れない暮らしを守る3つの実践ステップ

7.まとめ:食が途切れない仕組みが、老後の安心をつくる

    1.身近に広がる“買い物のしづらさ”—食生活が崩れ始める入口

    買い物のしづらさは、食生活の偏りや外出機会の減少につながる、老後の暮らしの重要なサインです。

    年齢を重ねると、日々の生活の中で「当たり前だったこと」が少しずつ難しくなっていきます。買い物もそのひとつです。

    ここでは、買い物の負担がどのように生まれ、食生活の偏りにつながりやすいのかを、身近な場面から整理します。

    1.1 たった500mが遠くなる—買い物負担が高齢者の食材の選択肢を狭める

    たとえば、75歳でひとり暮らしをしているAさんの場合。最寄りのスーパーは直線では500mほどですが、実際は「行って帰るだけ」でひと仕事です。ゆるい坂や段差が続き、天気が悪い日は転倒も心配になります。

    買い物が負担になると、起きやすい変化は大きく3つです。

    ・行く回数が減る(「今日はやめておこう」が増える)
    ・軽い物に偏る(牛乳や水、野菜などは持ち帰りづらい)
    ・家にあるもので済ませがち(パン・菓子・レトルトが増える)

    こうして「買える量・種類」が減っていくことが、食生活の偏りの入口になります。

    1.2 なぜ「行きたいのに行けない」が起きるのか—4つの背景

    高齢者が買い物に行きづらくなる理由は、決して“体力の衰え”だけではありません。日常の環境変化が、知らず知らずのうちに負担を増やしています。

    ・近くの店が減った(徒歩圏の商店の閉店など)
    ・公共交通が使いにくくなった(バス減便、停留所までが遠い等)
    ・免許返納で移動手段が減った
    ・ひとり暮らしで頼れる人がいない

    こうした変化が重なると、「行きたいのに行けない」という状況が生まれていきます。そしてそれは、本人の“気力”や“自信”にも影響を与え、ますます外出から遠ざかってしまうことにつながります。

    1.3 買い物は“健康インフラ”——暮らしを支える基盤

    買い物に行けなくなることは、単に「食材が買えない」という問題にとどまりません。買い物には、食べ物を手に入れるだけでなく、歩く(移動)/ものを選ぶ(判断)/店員や周囲の人とやり取りをする(交流)といった、生活の中の大切な機能が含まれています。

    つまり、買い物は「食べる」ことと同時に、「生きる力」を保つための身近な活動でもあります。

    買い物のしづらさが続くと、食事の質が落ちやすくなり、体力が落ち、外出が遠のき、人と会う機会も減り、気持ちも沈む——。生活の“輪”が小さくなることで、心身の状態はゆっくりと、しかし確実に弱っていきます。

    だからこそ、買い物を支える仕組みづくりは、高齢者にとっての「健康インフラ」と言えるほど重要なのです。

    参照:農林水産省「食料品アクセス問題と高齢者の健康」

    2.日本で広がる「買い物難民」—定義と規模、都市部で増える理由

    買い物難民は、過疎地だけの問題ではありません。都市部でも高齢化や単身化、身近な商店の減少によって広がっています。

    買い物のしづらさは、個人の体力だけで起きる問題ではありません。社会構造の変化や地域の環境変化が重なり、買い物が難しくなる高齢者は全国で増えています。

    この章では、「買い物難民(買い物弱者)」が何を指すのか、どれほどの規模なのか、そして都市部でも増えている理由を、必要なポイントに絞って整理します。

    2.1 買い物難民/買い物弱者とは?まず知りたい基礎知識

    「買い物難民」や「買い物弱者」という言葉には、法律上の統一した定義はありません。一方で国の資料では、食料品の購入に不便や苦労を感じている人を「買い物困難者」として捉え、実態把握や支援策の検討が進められています。

    地域ごとの状況を客観的に把握するため、農林水産政策研究所では「食料品アクセスマップ」を作成し、買い物が難しい高齢者の規模を推計・可視化しています。

    このマップでは、たとえば「店舗まで直線500m以上」かつ「自動車の利用が困難」な65歳以上といった条件でアクセス困難人口を推計します。なお、この500mは推計上の目安であり、地形や歩行状況、体力によって実際の負担は大きく変わるため注意が必要です。

    2.2 数字でわかる現状(904万人・4人に1人)

    買い物がしづらい高齢者は、今も確実に増え続けています。まずは現状をつかむために、重要な数字を3つだけ確認しておきましょう。

    ・全国904万人(65歳以上の25.6%)が該当

    農林水産省の推計では、食料品アクセスに困難を抱える65歳以上の高齢者は904万人(25.6%)にのぼります。つまり、高齢者のおよそ4人に1人が買い物に不便を抱えている計算です。

    ・その多くが75歳以上(62.6%・566万人)

    買い物のしづらさは、より高齢になるほど深刻になりやすい傾向があります。同推計では、困難人口の62.6%(566万人)が75歳以上を占めています。

    ・2015年比で約9.7%増(都市部でも増加)

    同推計では、2015年と比べて困難人口が9.7%増とされています。増加は地方に限らず、都市部でも見られる点が特徴です。

    ・東京圏:203万7千人
    ・名古屋圏:78万7千人
    ・大阪圏:131万7千人

    三大都市圏で全体の45.8%を占めていることが分かっています。

    参照:農林水産省「2020年食料品アクセスマップと困難人口の推計結果について」
    参照:農林水産政策研究所「表4. 食料品アクセス困難人口の動向(都道府県別)」

    2.3 なぜ都市部でも増えているのか:3つの要因

    「買い物難民」は過疎地の問題と思われがちですが、実際には都市部でも増えています。その要因は、主に次の3点があります。

    1)徒歩圏の買い物先が減っている(商店街・小規模店の衰退)

    都市部でも、八百屋・魚屋・肉屋など身近に頼れた店が減り、「歩いて行ける距離の買い物先」が失われる地域が増えています。結果として買い物先が遠方の大型店に偏りやすくなり、移動の負担が大きくなります。

    2)交通があっても“高齢者にとって使いやすい”とは限らない(公共交通のギャップ)

    都市部は交通が便利な印象がありますが、高齢者にとってはそうとは限りません。バス停までの距離、坂や階段、便数の減少、駅までの遠さなどが重なると、「歩けるかどうか」が大きな壁になります。

    買い物は重い荷物を伴うため、少しの距離でも負担が一気に増えます。

    3)単身高齢者が増え、頼れる人がいない(核家族化・近所づきあいの変化)

    都市部では単身化が進み、「代わりに買ってきてもらう」という選択肢を持ちにくい高齢者が増えています。体調や天候、荷物の増加といった小さなきっかけで買い物が難しくなるリスクも高まりやすいのが特徴です。

    ここまでで、「買い物の困難」は地域や個人の事情が重なって起こり、都市部でも例外ではないことが分かります。

    ▼あわせて読みたい記事はこちら
    買い物に行きづらい状態は、一人暮らしの高齢者ほど見えにくく、食事や外出、人とのつながりにも影響しやすくなります。老後の一人暮らしで起こりやすい不安や、安心して暮らすための備えを知っておくことも大切です。
    老後の一人暮らし:増える「おひとりさま」の今と、安心して暮らすための準備

    3.なぜ“買い物のしづらさ”が食事と健康を同時に脅かすのか

    買い物のしづらさは、食材の選択肢を狭め、低栄養や体力低下、外出機会の減少へつながることがあります。

    買い物がしづらくなると、「食べる量が減る」「好きな食材が買えない」といった変化だけでは終わりません。食材の選択肢が減ることで食事が偏りやすくなり、体力や生活のリズムにも影響が広がっていくことがあります。

    ここでは、起こりやすい影響をポイントに絞って整理します。

    3.1 食材の選択肢が減ると、栄養が偏りやすい

    買い物に行きづらくなると、どうしても手に入る食材が限られ、食事の内容が単調になりやすくなります。特に高齢者は、生鮮食品を買うために重い荷物を運んだり、複数の店を回ったりする負担が大きいため、“食べたいもの”ではなく負担の少ない食品に頼りがちになっていきます。

    肉や魚、卵、大豆製品といったたんぱく質源は健康維持に欠かせませんが、これらは重くてかさばるため、買い物に行きにくくなると真っ先に削られてしまう食品群です。

    その結果、手軽に食べられる加工食品や日持ちする食品に偏り、必要な栄養が十分にとれないまま過ごしてしまうことがあります。気づいたときには、思った以上に栄養が偏ってしまっていることも珍しくありません。

    3.2 買い物が難しい日が続くと起きやすい悪循環

    買い物がしづらい状態が続くと、困りごとは「一時的な不便」で終わらず、生活の中で重なっていきやすくなります。とくに注意したいのは、食材の選択肢が減ることが、体力や外出の機会にまで影響し、さらに買い物を難しくしてしまうことです。

    この変化は、次のように段階的に進みます。

    生鮮品が減る → 食事が偏る → 体力が落ちる → 外出が減る → ますます買い物が難しくなる

    買い物が負担になるほど、生鮮品は「重い」「日持ちしない」「調理が大変」といった理由で後回しになりやすく、手軽な食品に偏りがちです。すると栄養が不足しやすくなり、体力が落ちて「行けない日」が増える——という悪循環に入りやすくなります。

    この流れを断ち切るには、気合いや根性で頑張るよりも、買い物や食材確保の手段を複数持ち、途切れない形に整えておくことが現実的です。農林水産省の分析でも、食品アクセスが悪い地域では食品摂取の制約が生じ、健康に影響が出る傾向が示されています。

    参考:農林水産省「食料品アクセス問題と高齢者の健康」

    3.3 外出が減ると、気持ちも落ち込みやすい

    買い物は、食材を手に入れるだけでなく、外に出て歩き、人とやり取りし、自分で選ぶという日常の刺激にもなっています。その機会が減ると、家にこもりがちになり、人と会うきっかけも少なくなります。結果として気持ちが沈みやすくなり、「出かける自信」がさらに小さくなることもあります。

    もし「外に出る機会が減ってきた」「人と話す日が少ない」と感じる場合は、早めに“つながりを保つ仕組み”を持っておくと安心です。

    4.食が途切れないための選択肢—食品アクセスを支える4つの方法

    大切なのは、買い物を一人で頑張り続けることではなく、食材が届く・買えるルートを複数持つことです。

    買い物が難しくなる高齢者が増えるなかで、全国ではさまざまな支援策が動き出しています。ここでは、食品アクセスを支える代表的な取り組みを4つ紹介します。

    どれも「買い物ができる日を確保する」「毎日の食事の質を落とさない」ために、地域で大切な役割を担っています。

    4.1 家まで来てくれる移動スーパー(対面で選べる安心)

    移動スーパーは、軽トラックや小型車両に商品を積んで地域を巡回するサービスです。高齢者にとっては“待っていれば来てくれるお店”という安心感があり、買い物だけでなく店員さんとの会話も心の支えになることが多い仕組みです。

    最近は自治体と連携し、見守りの機能を兼ねる形で運行される例も増えています(運行形態や支援内容は地域・事業者により異なります)。

    代表的な例として、カスミは自治体と連携し、地域を巡回しながら見守り機能も兼ねた移動スーパーを運行しています。また、とくし丸は全国47都道府県で1,100台以上が走り、スーパーと提携した自宅前販売を展開する最大規模の事業者です。

    いずれも「外に出づらい人に食を届ける仕組み」として広く活用されています。

    向いている人:外出の負担が大きい/対面で相談しながら選びたい/会話の機会も持ちたい

    4.2 買い物バス・乗合タクシー(移動そのものを支える)

    「お店はあるが、行くのが大変」という場合に役立つのが移動支援です。自治体が運行するコミュニティバスや、予約型のデマンド交通(呼べば来る小型車両)、相乗りできる乗合タクシーなど、地域の実情に合わせた仕組みが広がっています。

    買い物に合わせた時間帯・ルートを設けたり、乗り継ぎなしでスーパーへ行けるようにしたりと、外出のハードルを下げる工夫がされています。

    向いている人:買い物先はある/坂や距離が壁になっている/外出習慣を保ちたい

    参照:国土交通省「地域公共交通の活性化・再生への事例集」
    参照:全国ハイヤー・タクシー連合会「乗合タクシー事例集」

    4.3 生協・ネットスーパーの宅配(重い物と定期配送に強い)

    宅配サービスは「家から出なくても買い物ができる」方法として、食品アクセスを支える大切な選択肢です。重いものを運ばなくてよい、天候に左右されにくい、定期的に届けてもらえるなどの利点があり、生活の土台を安定させやすくなります。

    ネット注文が難しい場合でも、電話注文やサポートがあるサービス、家族が代わりに注文する形など、続け方はいくつか考えられます(対応は事業者により異なります)。自治体によっては、民間事業者との協定や相談窓口を設ける例もあります。

    向いている人:重い物がつらい/天候で外出しづらい/“毎週届く”安定感がほしい

    4.4 公民館・郵便局のミニ店舗(近所で買える日をつくる)

    「お店が遠い」地域では、公民館・集会所・郵便局などを活用して、小規模な販売所を設ける例があります。週に1回でも「買える日」を作れると、食材確保の安心感が増え、外出のきっかけにもつながります。

    ミニ店舗は単独で完結するというより、移動販売や宅配と組み合わされることも多く、地域全体で“食べるのに困らない仕組み”を作る動きの一部として機能します。

    向いている人:近所で買える日を確保したい/週1でも拠点があると安心できる

    参照:農林水産省「食品アクセス(買物困難者等)問題の現状について」

    ▼あわせて読みたい記事はこちら
    買い物のしづらさは、宅配や移動販売だけでなく、配食・家事代行・見守りなど生活全体の支え方とあわせて考えることも大切です。高齢期の暮らしを支えるサービスの種類や選び方を知っておくと、買い物以外の困りごとにも備えやすくなります。
    【高齢者 生活支援サービス】完全ガイド|家事代行・配食・訪問介護・保険外サービスを比較

    5.自分に合う方法を見つける:“選び方の基準”と組み合わせ方

    食品アクセス対策は、1つの方法だけで解決しようとせず、買いにくい物・頻度・注文のしやすさに合わせて組み合わせることが大切です。

    4章で紹介した支援策は、それぞれ良さがある一方で、「どれを選べばいいか分からない」と感じやすいのも事実です。

    大切なのは、手段を“単発”で選ぶのではなく、暮らしに合わせて無理なく続く形に組み合わせることです。ここでは迷ったときに判断しやすいよう、4つの基準と、真似しやすい組み合わせ例をまとめます。

    5.1 何が買いにくいかを整理する

    まずは「何が一番買いにくいか」をはっきりさせると、選ぶ手段が絞れます。困っているのは、どの買い物でしょうか。

    ・生鮮(肉・魚・野菜)を確保したい
    → 移動スーパー/買い物便/週1の購入機会をつくる

    ・重い物がつらい(米・水・日用品)
    → 宅配に寄せる(定番品を固定すると続きやすい)

    ・日用品が切れやすい
    → 定期配送・まとめ買い・常備品のテンプレ化

    「全部を一つで解決しよう」とすると無理が出やすいので、どんな買い物をしたいかによって買い物の役割を分担して考えるのがコツです。

    5.2 どれくらいの頻度で必要かを考える

    次に、「どれくらいの頻度で困りごとが起きているか」を確認します。買い物に行けない日が、月にどのくらいありますか。

    体調や天候で外出が左右されるなら、週1の補完だけでなく、“毎週の安定供給”があると安心です。

    基本は「2ルート持ち」。ひとつが止まっても食が途切れにくくなります。

    ・例:宅配で常備品を毎週確保+移動スーパーで生鮮を補う
    ・例:買い物バスで週1外出+不足分は宅配で埋める

    5.3 注文のしやすさ(電話・ネット・家族の代行)を確認する

    続けられない仕組みは、実質使えません。ここでは、注文・支払い・受け取りが“無理なく回るか”を先に確認します。

    ネットが苦手な場合でも、家族が初期設定だけ行って本人は受け取るだけにする、電話注文の可否を確認するなど、「続く形」に調整できます(対応は事業者により異なります)。

    宅配やネットスーパーを検討する場合は、サービスの有無だけでなく、注文・支払い・受け取りまで無理なく続けられるかも確認しておくと安心です。ネット注文が苦手な場合の工夫は、4-3章の「あわせて読みたい記事」で紹介している関連記事も参考にしてください。

    5.4 見守り機能が必要かどうかを判断する

    買い物が「外に出るきっかけ」や「会話の機会」になっているかも、軽く意識してみてください。対面のやり取りがある手段は、結果として生活リズムや安心感につながることがあります。

    対面で買える手段は、「相談しながら選べる」「短い会話が生まれる」といった点で、外出や交流のきっかけになりやすいことがあります。

    もし「最近人と話す日が少ない」「外に出る用事が減っている」と感じる場合は、買い物支援とあわせて“つながりを保つ工夫”も知っておくと安心です。

    5.5 基準を組み合わせた利用パターンの例

    ここまでの4つの基準(何が買いにくいか/頻度/注文のしやすさ/対面の要素)を踏まえると、「どれか1つに決める」よりも買い物の役割を分担し、2つ組み合わせるほうが続きやすくなります。

    まずは真似しやすい形から試してみてください。

    ・例A:移動スーパー(月数回)+宅配(毎週)
    生鮮は対面で選び、重い物や日用品は宅配で固定する。

    ・例B:買い物バス(週1)+宅配(不足分)
    外出習慣を残しつつ、欠ける部分を宅配で補う。

    ・例C:地域拠点(週1)+宅配(常備)
    近所で買える日を作り、常備品は宅配で安定させる。

    最初から完璧にする必要はありません。「途切れない形」になっているかを目安に、頻度や役割分担を少しずつ調整していくのが現実的です。

    6.今日からできる:食事が途切れない暮らしを守る3つの実践ステップ

    食が途切れない備えは、大きな準備ではなく、「気づく」「決める」「つながる」の3つから始められます。

    買い物の困りごとは、突然起きるというより、体調や天候、交通の変化などが重なって「少しずつ増えていく」ことが多いものです。だからこそ、完璧を目指すよりも、食が途切れないための“最低限の備え”を先に作っておくと安心につながります。

    ここでは、今日から始めやすい3つの実践を紹介します。

    6.1 まず1週間、“途切れ”がないか確認してみる

    まずは、「買い物に行けない日があっても数日しのげるか」を確認します。チェックは細かくやらなくて大丈夫です。次の3点だけで十分です。1週間だけ、普段の食材の流れを意識してみます。

    ・たんぱく源があるか(肉・魚・卵・豆製品、または冷凍・缶詰でも可)
    ・野菜・果物が不足していないか(生鮮が難しければ冷凍やカット野菜でも可)
    ・飲み物が足りているか(水・お茶など、重い物が切れやすい)

    こうした小さな“途切れ”は、買い物の負担が増えているサインです。1週間の様子を振り返るだけで、自分や家族がどこでつまずきやすいのかが自然と見えてきます。

    6.2 「次に使う手段」を書いて決めておく

    次に、買い物が難しい日でも食材が途切れないように、「代替手段を2つ」決めておきます。ポイントは、頭の中で考えるだけで終わらせず、メモに残して“迷わない状態”を作ることです。

    「今日は行けないけど、これを使えば大丈夫」という安心につながることがあります。

    これは、気持ちを軽くする効果も大きく、“買い物のストレス”を減らすうえでも非常に有効です。

    ・例:宅配(重い物・日用品)+移動スーパー(生鮮)
    ・例:買い物バス(週1)+宅配(不足分)
    ・例:近所の拠点(週1)+宅配(常備品)

    「どれが自分に合うか」の判断基準は、5章で整理しています。迷ったら先に5章へ戻って確認してみましょう。

    6.3 困ったときに相談できる先をひとつ確保しておく

    買い物の困りごとは、家族だけで抱える必要はありません。地域包括支援センター、自治体の相談窓口、社会福祉協議会など、地域には“相談できる場所”が必ずあります。

    大切なのは、困ってから探すのではなく、「いざという時に連絡できる先を1つ決めておく」ことです。

    電話番号を書いて冷蔵庫に貼る、スマホに登録する——それだけで、もしものときにも迷わず助けを求められます。特に一人暮らしの方や、家族が遠方にいるケースでは心の支えになります。

    食事が途切れないための仕組みは、大がかりなものではなく、「気づく」「決める」「つながる」という3つの積み重ねでつくることができます。今日できる一つの行動が、明日の暮らしの安心につながります。

    ▼あわせて読みたい記事はこちら
    買い物のしやすさは、老後の住まいを考えるうえでも見落とせないポイントです。近くに店があるか、公共交通を使いやすいか、家族や地域とつながりやすいかを確認しておくと、将来の暮らしの安心につながります。
    老後の住まいの選び方|自宅継続・住み替え・高齢者向け住宅の比較ガイド

    7.まとめ:食が途切れない仕組みが、老後の安心をつくる

    買い物がしづらくなることは、単なる不便で終わりません。食材の選択肢が減ることで食事が偏りやすくなり、体力の低下や外出機会の減少へとつながっていきます。

    だからこそ、食品アクセスは水道や電気と同じように、健康を支える生活インフラの一つと考える必要があります。

    移動スーパー(移動販売)、宅配、買い物バス・乗合タクシー、地域の小さな拠点など、食を支える方法は複数あります。大切なのは「どれが正解か」ではなく、困りごと(生鮮・重い物・移動など)に合わせて、2つ以上の手段を組み合わせて“途切れない状態”をつくることです。

    まずは、1週間の食材・飲み物の途切れチェックを行い、使えそうな手段を2ルート仮決めしてみてください。地域の情報が見つからないときは、地域包括支援センターや自治体窓口など相談先を決めておくだけでも暮らしの安心につながります。

    “食べることが途切れない環境”をつくること。それは、高齢期の健康を守り、毎日の暮らしに安心をもたらす、確かな備えになります。

    Related

    関連記事

    CONTACT

    「自分らしく生ききる」ための住まいや暮らしについて、お気軽にご相談ください。住まいや暮らしのご相談はこちら

    お問い合わせ