わがままハウス山吹の住まい相談には、子ども世代だけでなく、80代・90代の方が、自分で調べて訪れることがあります。
自分のこれからの暮らしを、自分で選びたい。そう考える人がいる一方で、制限の少ない暮らしには、気がかりも伴います。
自由に過ごせることは魅力でも、それがどのような関わりの中で成り立っているのかが見えなければ、安心して選ぶことはできません。相談の場にはいつも、期待と不安の両方が持ち込まれています。
今回は、自由を求める気持ちと、その隣にある不安を、山吹の相談の現場から見ていきます。
1|自分で住まいを探し、相談に来る
高齢者の住まい探しというと、子ども世代や家族が中心になって進めるものと思われがちです。けれど山吹には、自分のこれからを考え、自分で情報を探し、問い合わせてくる人がいます。
そこには、自分の暮らしを自分で選びたいという気持ちがあります。
どこで暮らし、どんな毎日を送りたいのか、何を続け、何を手放したくないのか。そうしたことを、その人自身が考えているのです。
たとえば、これまで続けてきた習慣を残しながら、自分のペースで一日を過ごすこと。食事や外出に限らず、日々の過ごし方をできるだけ自分の感覚で選べること。
そうした自由を、暮らしの中に残せる住まいを求めている人もいます。
ただ、自分で選ぼうとしているからこそ、そこには期待だけでなく、不安も一緒にあります。
山吹の相談は、その両方を持ったまま始まっていくのだと思います。
2|自由に選べることと、気づける距離にいること
宮崎さんは、山吹での暮らしについて話すと、制限の少なさに驚かれることがあるといいます。けれど、それは何でも好きにしていいという意味ではありません。
山吹で大切にされているのは、その人がどう暮らしたいのかを、最初から否定せずに聞いてみることです。
宮崎さんは、山吹でのわがままを、自分本位に振る舞うことではなく、あるがままに暮らすこととして話していました。
その自由は、特別な制度や大きな選択だけを指しているわけではありません。
日々の中で、その人がどう過ごしたいかを選べる余地として表れます。
たとえば外出についても、最初から行き先を細かく制限するわけではありません。行き先と帰ってくる時間を伝え、自分で行けるのであれば、基本的には出かけることができます。
それは、行動を管理するためというより、何かあったときに気づけるようにしておくための確認です。
食事についても、用意されたものだけで一日が決まるわけではありません。自分で買ってきたものを部屋に置いておくこともあれば、食べたいものを自分のタイミングで食べることもあります。
もちろん、体調や食べ方に変化があれば、まわりの人が気づける距離で過ごしています。
食べることをできるだけ本人の選択として残しながら、暮らしの中で見守られています。
けれど、そう聞くと、自由な暮らしに惹かれる一方で、「本当にそれで大丈夫なのか」と感じる人もいます。
それは、自由を否定しているわけではありません。むしろ、自由に暮らしたい気持ちがあるからこそ、その暮らしがどのように成り立っているのかを知りたくなるのだと思います。
たとえば、外に出たあとに戻れなくなったらどうするのか、体調が悪くなったときには誰に相談できるのか。自分で決められる範囲が広がるほど、どこに支えがあるのかも気になってきます。
相談の場で出てくるのは、単に自由かどうかを確かめる問いではありません。
知りたいのは、その自由が日々の暮らしの中でどのように成り立っているのかということです。
だから宮崎さんは、そうした気がかりをすぐに打ち消すのではなく、まず相手が何を心配しているのかを聞きながら、山吹での暮らしを具体的に伝えていきます。
「自由だから大丈夫」と言い切るのではなく、どのような選択ができ、それを支えるためにどんな関わりがあるのかを一つずつ話していく。
そこに、山吹の相談のあり方があるのだと思います。
まとめ|「自由で大丈夫?」を、暮らしの形でほどいていく
自由に暮らしたい。でも、本当に大丈夫なのかも気になる。その両方の気持ちは、矛盾ではなく、同じ場所から生まれているのかもしれません。
山吹で説明されているのは、「自由です」という一言ではありません。
その人が何を大切にして暮らしたいのか、どこまで自分で決めたいのか、どんなときに支えがあると安心できるのか。そうしたことをたどりながら、自由をその人自身の暮らしとして受け取れるようにしていく時間です。
山吹の暮らしは、何でも好きにできる場所でもなければ、すべてを管理される場所でもありません。
だからこそ、「そんなに自由で大丈夫?」という問いに、簡単な答えは出せないのだと思います。
その人にとっての自由と、安心して暮らし続けるための関わり。
その両方を一緒に確かめていくのが、山吹の住まい相談の姿が表れているように感じます。

