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暮らす人のこと|「今日決めないでください」共同生活に入る前の覚悟

Series | An Interview with Kazuko Miyazaki: Part 9—About the People Who Live There

わがままハウス山吹では、入居を本気で考える人に向けて宮崎さんが山吹の暮らし方を説明することがあります。

宮崎さんが伝えるのは、ここが介護施設ではなく、わがままに自由に暮らす家であること。人とのつながりを大切にしながら必要な支援は外から受け、自分の暮らしをできるだけ自分のものとして持ち続ける場所でもあります。

その説明を聞いて「ここで暮らしてみたい」と気持ちが動く人もいますが、宮崎さんはそこで一度考える時間を置くように伝えます。

共同生活に入る前に必要なのは条件を確認することだけではなく、人と暮らす安心も思い通りにならない難しさも知ったうえで、それでも自分はこの暮らしを選ぶのかを考えること。

山吹ではその答えを急がず考える時間が大切にされています。今回は、共同生活を選ぶ前に時間を置く意味について見ていきます。

1|いいことだけではありません

    2|共同生活に入るには、人生観を切り替える覚悟がいる

      3|決める前に、暮らしている人に会う

        まとめ|決める前の時間が、本人の自由を守る

          1|いいことだけではありません

          山吹は、高齢になってもわがままに自由に暮らすことを大切にしているシェアハウスです。

          食卓があり、日々の中で自然に人と顔を合わせる時間がある一方、必要なときには自分の部屋で静かに過ごすこともできます。その暮らしのそばには寄り添いスタッフもいて、日中は同じ家の中で過ごしながら入居者の様子を見たり言葉を交わしたりしています。

          一人で暮らし続けることに不安がある人にとって、誰かがいる場所は安心につながり、必要な支援を受けながら自分らしく暮らせる場所があることは大きな希望にもなります。

          けれど山吹で始まるのは安心だけの暮らしではありません。すでに暮らしている人たちがいる家に、自分も入っていくことになります。

          宮崎さんは山吹のよいところを説明したあと、入居を本気で考える人にこう付け加えます。

          「私は、いい話だけをしました」

          そのうえで話すのが、人と暮らすことの大変さです。

          家族でも夫婦でも、一緒に暮らすことが簡単ではないのは共同生活も同じ。誰かがいることは安心になる一方で、誰かがいるからこそ自分の思い通りにいかないこともあります。

          宮崎さんは、そうした両方の面を最初に伝えています。

          2|共同生活に入るには、人生観を切り替える覚悟がいる

          一人暮らしを続けるのか、人と一緒に暮らす共同生活に入るのか。それは年を取れば自然に決まることではなく、これからの暮らし方を自分で選び直すということです。

          一人で築いてきた生活には、その人なりのリズムがあります。起きる時間や食べる時間、人との距離の取り方など、誰にも気を遣わずに過ごしてきた時間もあるでしょう。

          そこから自分とは違うリズムを持つ人たちのいる場所へ入っていけば、自分だけで完結していた日々の流れも少しずつ変わっていきます。

          宮崎さんは、その変化を「覚悟」という言葉で語ります。

          覚悟というと、何かを我慢することのように聞こえるかもしれません。ただ、ここでいう覚悟は我慢することだけを指しているわけではありません。

          自分の自由を大切にしながら、ほかの人の自由とも折り合いをつけていく。

          それでも自分は、この暮らしを選ぶのか。

          共同生活に入る前に、その問いを一度自分の中に置いてみる。だから宮崎さんは、申し込みたいという気持ちが動いたその日にこう伝えます。

          「今日決めないでください」

          3|決める前に、暮らしている人に会う

          宮崎さんは、入居を考える人にすぐ申し込みを勧めるのではなく、まず今暮らしている人に会ってみてほしいと考えています。

          共同生活は資料や説明、建物を見るだけではわかりません。そこにはすでに暮らしている人たちがいて、これから隣に住むかもしれない人や、同じ家の中で日々の気配を分け合っていく人たちと暮らすことになります。

          どんな人たちと暮らすのか。その空気の中に自分は身を置きたいと思うのか。そうした感覚は、実際に会ってみなければ確かめられません。

          もちろん、暮らしている人に会えばすべてが見えるわけではなく、実際に暮らし始めてからわかることもあります。それでも、顔を合わせて初めて感じられることがあります。

          この人たちとなら暮らしてみたいのか。もう少し考えたいのか。それとも自分には合わないと感じるのか。

          そうした自分の感覚を確かめながら、この場所で暮らすかどうかを考えていくことも、共同生活を自分の意思で選ぶための大切な時間です。

          また、この時間は入居を考える人のためだけにあるものではありません。すでに暮らしている人たちにとっても、自分たちの生活の中に新しい人を迎える時間になります。

          だから無理に見せるのではなく、暮らしに無理のない範囲で顔を合わせ、日常の流れを壊さない形で関わる。

          共同生活は一人の希望だけで成り立つものではないからこそ、迎える側も含めて確かめていくことが大切になります。

          まとめ|決める前の時間が、本人の自由を守る

          山吹が大切にしているのは入居を急がせることではなく、誰かがいる安心も思い通りにならないしんどさも知ったうえで、自分はこの暮らしを選ぶのかを考えることです。

          共同生活に入るには覚悟がいるからこそ、決める前に時間を置き、暮らしている人に会って自分の感覚を確かめていく。

          「今日決めないでください」

          その言葉は入居を止めるためではありません。すぐに答えを出さず、自分がこれからどう暮らしたいのかを考える時間を残すこと。それが、本人が自分の暮らしを選ぶ自由を守ることにもつながっています。

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